アフリカスタートアップの資金調達

アフリカスタートアップの資金調達

前回記事の「アフリカのスタートアップ・起業家の現状」では、アフリカのスタートアップ・起業家が継続的な雇用創出を通じてアフリカの経済成長に貢献することの重要性について述べた。
この記事を深く理解するために、アフリカのスタートアップの資金調達に関するデータを調べ、スタートアップの資金調達不足に対しての解決策について検討する。

国際金融公社(世界銀行の一部門)によると、アフリカの起業家は2017年に5億5600万ドルを調達し、2016年比で53%増加した。
一方で、同じ年にラテンアメリカの起業家は19億ドルを調達し、インドの起業家は74億ドルを調達した。(1)
下のグラフは、3つの地域の人口、GDP、スタートアップのエクイティファイナンスを比較したものである。(2)

表1:新興国市場でのエクイティ投資額、人口、GDP

上記のデータは、アフリカがインドと人口が近いにもかかわらず、起業家へのエクイティファイナンスの点でインドよりはるかに遅れていることを明らかに示している。
さらに、2017年のアフリカ地域へもたらされた総資金の84%は、南アフリカ(1億6700万ドル)、ケニア(1億4700万ドル)、ナイジェリア(1億1400万ドル)、エジプト(3700万ドル)の4カ国に集中していた。(3)
これは、地域全体だけでなく、アフリカの主要なイノベーション拠点(カイロ、ケープタウン、ヨハネスブルグ、ナイロビ、ラゴスなど)以外にいる起業家にとって、資金が大幅に不足していることを示唆している。人口規模と経済発展の類似性を考慮した時に、アフリカとインドの間でスタートアップの資金調達に10倍以上の格差がある理由はなぜだろうか?
この問題は、供給側と需要側の2つの観点から広く検討できる。まずは供給側から、インドとアフリカにおける過去2年間の最大の資金調達取引について調べる。

表2:2017-2018のインドにおけるスタートアップ投資ランキング(4)(5)

企業名調達金額主要投資家
1. Flipkart $2.9 billionSoftbank, Tiger Global, Naspers
2. Ola$1.9 billionSoftbank, Tencent
3. Paytm$1.4 billionSoftbank
4. Swiggy$1.31 billionNaspers, DST-Global, Meituan Dianping
5. OYO$900 millionSoftbank, Lightspeed India Partners
6. BYJU’s$540 millionNaspers, Sequoia, Tencent

表3:2017-2018のアフリカ地域におけるスタートアップ投資ランキング(6)(7)

企業名調達金額主要投資家
1. Webuycars$94 millionNaspersSouth Africa
2. Zola Electric$75 millionHelios, SunFunderTanzania
3. Takealot$69 millionNaspersSouth Africa
4. Jumo$55 millionGoldman Sachs, Proparco, FinnfundSouth Africa
5. Cellulant$47.5 millionThe Rise Fund, Endeavor CatalystKenya
過去2年間の地域間の資金調達の違いは顕著であり、インドの上位5件の案件は、アフリカ大陸全体でトップのスタートアップの資金調達額よりも多くの資金を受けている。上記のデータから分かるさらに重要な点は、資金調達の大部分は国境を越えたものということである。
2017―2018年のインドのスタートアップに対する3大資金調達源は、圧倒的に最大の投資額を誇るソフトバンクCVCであるソフトバンクビジョンファンド、他には南アフリカのNaspersや中国のテンセントとなっている。
南アフリカの企業であるNaspersは同期間において、アフリカのスタートアップに対しても最大の投資家であるという点は注目に値する。
発展途上国全域でさらに注目を集めているのは、中国のテンセントによる出資総額(100億ドル以上にも上る)であろう。以上のファンドの話は、資金調達の格差が供給側の問題ではなく需要側の問題であることを示唆している。
アフリカ大陸では、インドのスタートアップと同じ規模の資金需要を持つスタートアップの数が不十分ということである。

アフリカのスタートアップではなぜ資金調達に対する重要が不足しているのだろうか?
数多くの複雑な要因があるが、大きく3つの理由が存在する。

1つ目は「市場の分断」である。
アフリカ大陸にはインドと同様の経済、人口の規模が存在するが、それらは異なる経済、法、金融、規制のある環境を持つ54の主権国家によって構成されている。
インドで最大のECサイトを持つFlipkartは、10億人を超える顧客にサービスを提供する一方で、南アフリカのTakealotでは6000万人未満にしか提供できていない。
確かに、市場規模の不足や、世界・大陸規模での野心の欠如は、アフリカでユニコーンの出現を妨げる重要な要因であると考えられる。(8)
ポルトガル、スウェーデン、ポーランドなどの他の小規模市場では国内でユニコーンが誕生しているが、アフリカのスタートアップの間ではまだまだ遠いようである。

2つ目の理由は、人的資本の不足である。
UNCTADのTechnology and Innovation Report 2018によると、STEM科目の学士での学位取得者全体の29.2%がインドの大学を卒業し、アフリカの大学を卒業したのはわずか0.9%であった(9)。

表4:2012年の国、地域別STEM学位の学士取得者の割合

アジア諸国では、与えられた学位全体のうち、STEMの学位が32%を占め、中国では42%に達した。
対照的に、STEM学位は、EU圏では授与された学位全体の18.5%、米国では16.7%、そしてアフリカでは7.2%に過ぎなかった(ただしエチオピアでの割合は29.5%)。
これは、大部分がテクノロジー分野に存在するスタートアップの成長を成功させるために不可欠なエンジニアリングおよびITスキルを持った人材の欠如を示している。3つ目の理由となる問題は、アフリカのほとんどの国々の特にシード期のスタートアップ環境である。
VC4Aが南アフリカのテクノロジースタートアップ環境を分析したところ、経験豊富な起業家の不足、アフリカ全体での成長を狙わない、不明確な政府政策、シード期の資金不足、制限された知的財産権、極端に低いレベルの数学および科学リテラシーなど、多くの欠陥が指摘されている。(10)
このような問題は、南アフリカが持つ資産基盤、比較的高レベルな民間企業、強力な大学制度、そしてヨーロッパや米国との密接な関係などの要素が欠けている他のアフリカ諸国ではさらに深刻化している。大陸の分断化、人的資本の不足、脆弱なスタートアップ環境といったこれらの問題の結果、ほとんどのアフリカ諸国は、他の発展途上国のスタートアップと資金調達において競争できる規模まで成長するスタートアップを生み出せないでいる。

根本的な解決策の1つは、国内資本の供給を大幅に増やすことによってスタートアップの資金調達需要を刺激することである。
南アフリカの起業家であるJason Levinは、政府がすべての政府部門年金基金、特にPICに、運用資金の0.5%をベンチャーキャピタルに割り当てるよう指示する方法を提案している。
これにより、スタートアップのアーリーステージに流れる資金が10億ドル近く増加する。(11)

しかし、アフリカのスタートアップがそのような資金を活用するスキルと能力を持っているかどうか、については課題が残る。
実際、SoftbankやNaspersなどによる最近の数百万ドル、さらには数十億ドルもの投資が示すように、大規模な資金の供給は存在している。
そのためこの資金調達不足の問題を解決するために、アフリカ諸国が今注力する必要があるのは、シード・アーリーステージにおける資金調達需要の増大、STEM教育への初等から高等教育への相当巨大な投資、と言える。
そしてアフリカ各国でのスタートアップエコシステムの改善と、他の新興国と競争するには小さすぎる、分断されたアフリカ各国の市場をまとめるための調整が必要となる。